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2022年の最優秀店は三宅島初の大型コインランドリー/ランドリーアサヌマ
我が子の成長を見守りながら島民や観光客に役立つ店
東京から南に約180キロ、伊豆諸島にある三宅島(東京都三宅村)。周囲を流れる黒潮の影響により、温暖湿潤な海洋性気候で年間平均気温17.7℃、真夏日の日数は年間平均12.7日、最低気温が氷点下の日数は年間平均0.5日と、夏は涼しく冬は比較的暖かい島だ。
中央部にそびえる「雄山」は1940年以降、約20年周期で噴火を繰り返し、島民の暮らしと生業に大きな影響を与えてきた中、2022年6月、「三宅島初の大型コインランドリー」としてオープンしたのが、主婦・浅沼里沙さんが運営する「ランドリーアサヌマ」だ。
同年12月のコインランドリーEXPOで表彰式が行われ、過去最多79店舗がエントリーした「コインランドリー店アワード」で、噴火のリスクと隣り合わせの困難な状況の中、島民の生活に役立ちたいという想いから、島の名産品「くさや」の加工場跡をリノベーションして出店に至るまでのバイタリティ、地域社会への貢献度などが高く評価された【最優秀賞受賞店舗】を取材した。
◆「何でもいい。恩返しがしたい」
約20年周期で噴火を繰り返してきた雄山の歴史で、特に甚大な被害をもたらしたのが4年5か月もの長期にわたる全島避難指示が出された2000年に発生した噴火。
三宅島生まれの浅沼さんだが、2000年当時は東京都内の携帯電話販売会社に勤務しており、その後はWebマーケティング会社に勤めていた。直接的に噴火を経験したわけではないが、「離れたことで、生まれ育った三宅島の存在の大きさに気付かされた。何でもいい。恩返しがしたい」と避難指示解除後に帰島、観光協会に就職した。
噴火前の約4,000人から約2,000人へと島民が半減した三宅島だが、島民にも観光客にも戻ってきてもらえるよう魅力を外へ発信する事業に携わる。各地から訪れる観光客で賑わうかつての日常は少しずつ戻り始めてきたという。
◆発達障害を持つ子どもの成長を一番近くで見守りたい
そんな中、浅沼さんの仕事も忙しさが次第に増していく。土日に出勤することも多くなり、仕事と家事、そして、発達障害を持つ子どもの育児のバランスを取ることへの難しさを感じるように。観光協会の仕事にやりがいを感じる一方「母として、今の仕事を続けていくことが正しいことなのだろうか」と悩んだ末、我が子の成長を一番近くで見守りたいと、10年近く在籍した職場を離れることにした。
その後、「2021年1月頃から構想が始まった」というのがコインランドリー事業。先述のような経緯から、子どもが常に自分と同じ場所にいながらできる仕事であることや、これまで三宅島には大型コインランドリーが存在していなかったことが始めようと思った理由だ。
後者について補足説明をすると、「約20年周期で発生する噴火にリスクを感じ、大きな設備投資に踏み切れなかったことが考えられる」と浅沼さん。しかし、島民は温暖湿潤な気候や、1年中吹く潮風で、こと洗濯に関しては常に悩まされてきた。
浅沼さん自身も「冬はストーブ、夏はエアコン、梅雨時期は除湿を行って部屋干しが基本。外干しできた日でも、午後3時以降は洗濯物が湿りやすくなるのでしまわないといけない」と語る。
子育てと両立が図れて、引き続き三宅島の地域社会に貢献していくことができる事業が、浅沼さんにとってコインランドリーだったのだ。いつ起こるか分からない噴火への心配よりも、現状の悩みを打破したい気持ちの方が強く、設備投資に対する心の迷いはなかったという。
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