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リネン工場の現場改善&生産管理術

需要変動における必要数量の把握と種類の対応

伊藤良哉 (いとうよしや)

今までこの連載ではあえて時事ネタに触れずに、どんな時代にも共通する現場の改善ということにテーマを絞った内容をお伝えしてきました。しかしさすがにコロナ禍以降の世の中の変化について触れずにいられません。工場稼働は市場のニーズを前提としています。どんな商売も市場のニーズがなければ成り立ちません。こんなシンプルなことを嫌というほど教えてくれた今回のコロナ騒動でした。

しかし大半の現場では、仕事量が減ることよりも生産供給能力の不足ばかりを恐れてしまい、結果として設備投資過剰や人員過剰、また仕入れの過剰を招いています。量が減ることに対しての意識は極めて低いのが現状です。 それに対してトヨタ生産方式では仕事量は市場のニーズで増えもすれば減りもする、と考えています。むしろ減ったときにどうするかが非常に大切だといいます。ところが市場の必要数量が減ることを想定している経営者や管理者は非常に少ないのが実情です。

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これは実際に筆者が食器生産工場の指導に入った時の話です。その工場は、国内でも大規模の生産能力が自慢で、日産10万個を生産する能力が売りでした。累計生産数が一億個という商品があったのも事実です。

しかしバブル崩壊以降の世の中は今に至るまでデフレ傾向、大量消費時代はとうに過ぎました。まず、陶器の問屋からの発注書を見せてもらうと、とんでもないことに気付きました。一種類ごとの発注量が一桁なのです。思わず「これは小売店からの発注伝票か」と訊いたぐらいです。しかしまぎれもなく問屋からの発注書でした。

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この記事の著者

伊藤良哉 (いとうよしや)

◉1959年1月生まれ、名古屋出身。

◉1983年全国ドライ新聞社(現ゼンドラ)に記者として入社。

その間にトヨタ生産方式の物の見方・考え方に触れ、クリーニングでの現場改善に力を入れた取材・執筆活動を行う。またその活動を通じて、トヨタ生産方式の産みの親として世界的に著名な元・トヨタ自動車工業副社長の大野耐一氏と出会い、師事して各地を歩く間に精神面・活動面ともに多大な影響と薫陶を受ける。

◉1985年に改善コンサルタントとして独立、1989年には株式会社エムアイイーシステム研究所を設立。さまざまな業種対象にトヨタ生産方式に基づいた現場改善のコンサルティング活動行なう。これまでに手掛けてきた業種は、クリーニング業はもちろんそれ以外に、リネンサプライ・食肉加工業・水産加工業・自動車関連部品工場・米穀業・窯業・塗装業・染色工場・測量事務所等と多岐に渡っている。また作業改善・体質改善だけでなく、新人社員研修、工場管理者研修、マニュアル作成等、講演やセミナーも同時に行う。

◉「クリーン忍術心得帖」パート1・2を著作(ゼンドラ既刊)を筆頭に著作も数多い。


主な著作

・「クリーン忍術心得帖 Part1〜11」

・「現場改善実践マニュアル」

・「アパレルの仕上げ術・1〜3」

・「アパレルの仕上げ術・Q&Aハンドブック」

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