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MA値7の優しい水洗いが簡単に
澁木 はじめに、ケケンさんのお仕事内容について教えて下さい
丸茂 元々は、輸出検査法に基づき、海外へ輸出するアパレル製品を評価・検査する団体でした。20年ほど前からは、国内市場のアパレル、小売り、リテーラーなどの自社内の品質基準の評価(堅牢度、物性試験など)が業務の中心です。特に一番重要なのは、近年、偽装も多いカシミヤの鑑定検査です。品質基準を評価する過程で、ケアラベルの表示に基づいて耐洗濯試験も行います。
澁木 クリーニングへの造詣も深いということですね。私どもは金属加工が本業で、クリーニング業界への進出は今回が初めてです。進出にあたって、少し業界のことを調べたのですが、結構厳しい業界ですね。昔は出ていた品物がファストファッションや形態安定の台頭で、家庭で洗濯できるようになっている。商材がどんどんなくなってきており、停滞感があるように思いました。ここが「はごろも」の開発背景にもなるのですが、現状の業界はドライクリーニングほぼ一本でしょうか?
丸茂 耐洗濯性試験の方法は家庭洗濯を前提とした製品の場合、簡単に決まりますが、ⓦマークの製品の評価が難しいです。確立された試験方法がなく、外部のクリーニング業者を探して試験を依頼しようとしていましたが、なかなか見つかりませんでした。ⓦに対して本格的に取り組んでいるクリーニング業者が、まだまだ少ないと感じました。
澁木 ⓦの意義と課題はどんなところでしょうか?
丸茂 家庭洗濯のリスクをプロが解消する点であり、特にウールやシルクといったものが、プロであるクリーニング業者に任せれば、フェルト化や毛羽立ち、縮みが生じることなく洗えるところです。しかし、技術の拡散が課題と言えます。
澁木 といいますと?
丸茂 ウエットは自社で研究をして洗浄方法を確立している業者はできますが、昔ながらの〝ドライ一本〟というお店には難しいです。個人の熟練した技術者など、属人的な側面も大いにあります。
澁木 となると、ウエットは業界では、まだまだ一般的ではないし、技術は広がりにくいと。経験があるところはできて、ないところはできない。消費者は水洗いを希望する場合、店舗選びに大きな制約があるわけですね。
丸茂 そういう意味で、この「はごろも」は店側にとっても、消費者にとってもウエットクリーニングのハードルを大きく下げる役割が期待できるといえます。また、アパレル側では、家庭で簡単に洗える衣類のニーズが高まっていることもあり、天然素材でもウォッシャブル加工を施した製品が多いです。こうした加工は天然素材の本来の良さ(風合いなど)を犠牲にしています。しかし、アパレルはウォッシャブル加工をせずにⓦを付けるという勇気は今のところありません。「はごろも」の登場は、天然素材の良さを存分に活かす製品開発の可能性にも繋がると思います。
澁木 今年3月、洗浄テストを行ったときに丸茂さんは「はごろも」でスーツを洗いましたが、感想があれば教えて下さい。
丸茂 洗浄後の水の汚さを見て、「こんなに汚れていたのか」と衝撃的だったのと同時に、水流の物理的作用だけでこれだけ汚れが落ちるのかと驚きました。また、仕上げ後の着心地は、つきものが取れた感覚でした。
澁木 繊維自体に何かいい影響があるのですか?
丸茂 ウールの表面は油溶性で中は親水性なので、水を一回浸透させて乾燥させると、何かいい影響があるのではないかと思いますが、そこは研究してみたいですね。
澁木 「はごろも」ではどんな衣類が商材となるとお考えですか?
丸茂 一番はやはりスーツ(ウール)です。また、高級獣毛(セーター、マフラー)、あとは、これで洗ったカシミヤを着たいです。ドライクリーニングと「はごろも」によるウエットクリーニングとで、カシミアの着心地を比較したいです。アパレル側では家庭洗いを前提とした製品の開発に積極的でⓦに関しては消極的ですが、「はごろも」で新人パートレベルでも簡単にウエットができるようになれば、今の商品開発の風向きを変えることができるかもしれません。それがクリーニング業界の新しい需要に繋がると思います。
澁木 ありがとうございました。
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