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瀧藤圭一の戦略会計【実践編】

特に重要な指標は「手元流動性比率」であり、貸借対照表の流動資産にある「現金預金残高」の金額

有限会社エルコーポレーション 代表取締役

瀧藤圭一* (たきふじけいいち)

●ROAの計算に使用する指標
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さて、特に重要な指標は「手元流動性比率」であり、貸借対照表の流動資産にある「現金預金残高」の金額です。これは今現在、会社にどれだけの現金・預金があるか、そしてたとえ数ヶ月間売り上げが無くても事業を維持していくことができるかを判断する重要な指標です。会社は赤字でも資金さえあれば潰れはしませんが、資金が無くなればたとえ黒字であっても潰れてしまいます。それだけに、この現金・預金残高は毎月必ずチェックしなければなりません。その上で資金繰り表を作成して、合わせてチェックすることが必要です。

特に重要な指標は「手元流動性比率」であり、 貸借対照表の流動資産にある「現金預金残高」の金額です

次に重要な指標は「売上高営業利益率」です。これは本業の儲けを示す指標なので、どれだけ本来の業務で儲かっているのかを示す指標となります。もちろん黒字であることは必須ですが、最低限3.5%、できれば5%は確保したいものです。

そして同様に重要な指標として「自己資本比率」があります。総資本(他人資本+自己資本)に対する自己資本の割合を表したものですから、企業の安全性や健全性を見る指標となります。金融機関から多くの借り入れをおこなっている場合は特に重視する指標となるので、毎月の確認は必須です。なぜなら、この数値が低い場合は借入金などの負債が多いと判断され、経営に関するリスク要因としてマイナス評価されることになってしまうからです。

とはいえ、事業を営む上ですべてを自己資金で賄うことは現実的ではなく、そうなると経営効率も悪くなります。ある程度の借入金は必要です。問題はその割合です。だからこそ、自己資本比率という指標があるのですが、その数値は業種によって大きく異なり、一概に何パーセント以上は必要ですとはいえません。

中小企業庁「令和元年 中小企業実態基本調査報告書(平成30年度決算実績)」(2020年7月)によると、生活関連サービス業(洗濯・理容・美容・浴場業)の平均値は33.42%となっています。一般的には、この数値が10%を割り込むと、返済や金利の負担がかさみ、経営を圧迫しているとみなされてしまいます。結果、金融機関からの信用低下につながり、資金調達等に悪影響を及ぼしかねないだけに気を付けなければなりません。

ただ、この他人資本である負債の中に役員借入金が入っている場合があります。これは法人税率より個人税率の方が低いために、会社にお金を残してこなかった場合や、月々の収支がキャッシュアウトした場合などに、役員である社長が個人資金を会社に貸し出したお金です。そのほとんどが長年、返済がおこなわれず、塩漬け状態になっているお金ですが、他人資本である負債に記載されているので、当然、自己資本比率の計算に含まれてしまいます。

もちろん金融機関等も決算報告書にある「勘定科目内訳明細書」の「借入金及び支払利子の内訳書」内にどこからの借入金であるかがはっきりと記載されているので、返済されないのであれば資本金等として自己資本に組み入れるべきお金だということは十分に承知しています。

しかし、借り入れたお金には違いはないので、負債にカウントせざるを得ません。この解決策はDES(デット・エクイティ・スワップ)をおこない、借入金を資本金等に変え自己資本に組み入れるか、債務免除益による税金負担(債務免除益課税)を覚悟して、役員からの塩漬け状態の貸付金を放棄してもらうことぐらいでしょうか。

次にROA(Return On Assets:総資産利益率)です。これは会社が持つ資産を用いて、どれだけ効率的に利益を得られたかを示す指標です。それだけに、経営者の経営能力を評価する指標と目されているので、常日頃からの確認を怠らないようにしなければなりません。



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この記事の著者

瀧藤圭一* (たきふじけいいち)

有限会社エルコーポレーション 代表取締役

有限会社エルコーポレーション代表取締役。

1957年 大阪市生まれ。

クリーニングの営業に興味を覚え、外交専門のクリーニング店へ入る。1985年に独立。1990年にユニット店「クリーニング エル」を開店。


現在は、長年の実経験に基づくコンサルタント&サポートに軸足を移すも、現場感覚が大切と、今も外交営業を続け市内を走り回る。

全国で経営、外交営業に関する講演活動及びコンサルタントを展開中。

業内においては、外交営業について講演できる唯一の逸材。


また、「経営は会計にあり」の基、店舗戦略をはじめとした経営実務とクリーニング業に即した会計の講座を年間スケジュールで開催。


売上も大事、利益も大事、しかしキャッシュはもっと大事の考え方を中心に、年収アップを目指す講座は人気を博し、大阪はもちろん、茨城、東京、八王子、神戸、広島、松山、浜松、福岡でも6回連続の講座をおこない、これまで1回完結の講座も含め、全国で延べ18講座を開催。


今尚、実務に即した講座、「戦略会計実践塾」を継続中。実践に基づいた経験と数理的な分析を加味し、わかりやすく成功理論を説く。


<著書紹介>

◆ クリーニング現場からのクレーム対応(完全版)

◆戦略会計入門

◆新版・目からウロコの外交営業マニュアル(実践編)

◆新版・目からウロコの外交営業マニュアル(基本編)

◆ポイントがわかるとスラスラ読める超かんたんクリーニング業の決算書読み方入門

◆ユニットショップ 経営でもっとも大切な事

◆ルート外交マニュアル最終完結版


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