- 最終更新日:
わかりやすい現場の基礎知識
令和始まる過去10年を振り返って
今年は春の繁忙期の始まりがずれて後半集中になったようですね。
令和最初の繁忙期を皆さん如何に乗り越えましたか。異常気象も続いていますので、その対策も決して忘れないようにしてください。
総務省の資料によれば、時間降水量50㎜以上の「非常に激しい雨」はここ30年で約1.3倍に増加し、時間降水量80㎜以上の「猛烈な雨」もここ30年で約1.7倍に増加しているとのこと。これからは大雨や台風を念頭においた預かり品対策が必要になると思います。
(http://www.soumu.go.jp/main_content/000526164.pdf)
さて私が所属しています一般社団法人日本繊維製品消費科学会・クリーニングに関する情報研究委員会では、8月に大阪、東京の両会場でクリーニングトラブルに関するセミナーを開催することとなり、過去のトラブル事例の見直しを連休中から始めました。
そこで気が付いたことは、近年多発する新素材や染色方法の変化による事故(例えばシームレスダウンの剥離やナイロンに分散染料を用いて染色することによるNOxガス退色)以外に、毎年のように同様のトラブルが繰り返されている現状があることです。
今回のセミナーのために過去10年間の鑑定を振り返り、50点ほどをピックアップしました。時間の関係でどの程度ご紹介できるか判りませんし、セミナーでの配布資料には事故品の画像はありません。また、当日のスライドについての撮影もお断りさせて頂きます。
しかし、全ドラ読者の皆さんには特別に紙面上で少しご紹介させていただきましょう。
トラブルの原因には、商品自体の問題(素材の特性、染色、耐久性等)から発生するものも多いのですが、クリーニング処理(洗浄、仕上げ、シミ抜き)が原因のものもあります。そして最近では、受付時及び洗浄前の仕分け時の点検ミスが鑑定依頼に増えてきています。
ポリエステルやナイロン製品のたばこや焚火(たきび)等によると思われる穴あき(溶解)、襟や袖口、股下などの繊維の損傷など、基本作業が疎かになっていることから無用のトラブルを招いているのでしょう。
話は変わりますが、20年前くらいでしたか、とあるコンサルタントの先生が『クリーニング業界は、同じ話を10年間繰り返しても、ありがたがって聞いてくれる』と言われ、複雑な思いをしたことを今でも時々思い出します。
なぜ同じトラブルを繰り返すのでしょうか、それは進歩を放棄しているからではないのでしょうか。前例主義(今まではこのように処理して問題がなかったから)や、事なかれ主義(新しいことに挑戦しなくても…)などが業界に蔓延していることが、クリーニング業の衰退を招いている可能性は高いと思います。
新しいことにチャレンジするにはリスクも伴います。また、景品表示法による規制の強化などで様々な表現が問題となっています。P&G社のファブリーズについても、「瞬間お洗濯」や「新!ファブリーズで洗おう」とのキャッチフレーズが消費者の誤認(優良誤認)を招くのではと消費者団体から指摘され、今後の表現を変更するように合意したとの発表もありました。記事はこちら
クリーニング業界もファブリーズに対する憤まんの解消が出来たと留飲を下げるだけでなく、他山の石として、自分自身を見直しする必要があるでしょう。あなたのクリーニング品質は十分なレベルにありますか。