- 最終更新日:
わかりやすい現場の基礎知識
衣料品の「付属品」とは?
コロナ禍の一年が終わろうとしています。来春はどのようなシーズンになるのか予断を許しませんが、これからも気を緩めることなく注意を重ねて行きましょう。
最近ですが8月1日号で紹介したピグメント加工など顔料プリントのトラブルが頻発しています。
顔料プリントによる染色品かどうかを洗濯表示や組成表示で判断することは難しく、手触りでの判断も難しいですから、洗浄後にチョークマークが発生することやシミ抜きによって白化することで気が付く場合が多いようです。付記表示にも顔料使用を明記したものは皆無なので、これからも頻発することが考えられますので気をつけてください。
さて、今回の本題の付属品について考えてみましょう。発端はデニムパンツに縫い付けてある皮革製のパッチからの移染でした。パッチを取り付けたままでの移染除去処理は、より一層の移染と皮革パッチの色落ちを招くことから、一度縫い付けられたパッチを取り外した後の移染除去処理とパッチの際染色及び縫い付けが必要となりました。
洗濯表示通りに洗浄を行って移染したのですから、流石にこのような品質は製品に問題があると考え、メーカーへのクレームを進言し、クリーニング店から連絡したところ、付記表示の文言を盾に責任回避をされたそうです。
付記表示には「付属品は取り外して洗濯してください」と表示されているので外さずに洗濯する方が悪いという主張のようであり、併せて「革パッチは色落ちする場合があります。他のものとは分けて洗濯してください」と記載されています。
さて、ここで付属品の定義について考えてみましょう。衣料品の付属品とはどのようなものを指すのかは意外にあいまいな解釈がされていたように思います。しかし、家庭用品品質表示法では衣料品の付属品についても明確に定義していることを府下の若手クリーニング経営者の方から教えていただきました。
家庭用品品質表示法第2条(定義)に対する消費者庁表示対策課の解説では、付属品を「それ自体は販売される商品の機能、特性に影響を与え商品価値を高めるものではなく、購入者の利便のために付けられたものであって、取り外しが可能なもの」と説明しています。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/outline/outline_04.html
この定義からすれば、しっかり縫い付けられた革パッチは、取り外し可能とは言えず、付属品の範疇から外れるものと考えるのが妥当でしょう。
どのような意図でアパレルメーカーの方が責任回避と言えるような回答をされたのかは不明ですが、消費者保護の観点からも、このような対応は望ましいものではないでしょう。
革パッチからの色落ちで他の衣類を汚すことが無かったとしても、パンツ自体を汚染することは避けられないのですから、洗濯自体を不可とするか、取り外しができるような取り付け方を選択することが必要だったと考えるのはおかしくないと思うのですが、如何でしょうか。
もう一つのクレームは、クリーニングによってモンクレールダウンの内側に縫い付けられているアニメタグ(コミックラベル)の端がギザギザになってしまったというものでした。
高額なダウン製品ですので購入された方も大切にされていたのでしょうが、コミックラベルは少し硬い素材が使用され、裁ち切りされたものが縫い付けられていますので、クリーニング時の機械力による摩擦だけでなく、着用中の摩擦などでも徐々に擦れて変化が生じるのは仕方がないことでしょう。
衣類に限らず使用すれば変化(劣化)することは避けられず、クリーニングで変化を遅らせることや、ある程度の回復は可能であっても、新品の状態をいつまでも保つことは不可能であることを理解してもらう必要があります。
コロナ禍から世間では閉塞感が漂っています。些細なことがクレームとなる場合もありますので、無駄なクレームで神経をすり減らすことが無いように、十分な注意を払うことを忘れないようにし、新しい年を皆様がお迎えできるよう祈念しております。