- 最終更新日:
売上アップスーパーレポート
2017年クリーニング業界の時流予測《後編》
前回の連載に引き続き、今年以降の「時流予測」をまとめてみました。
後半の10項目では、特に、大切な項目のみをピックアップしてお伝えします。
11 自社ホームページ(以下、HP)の充実
「充実したHPを持つこと」はクリーニング店がこの先、利益を出して存続するためには必要不可欠な要素です。大きな効果は2つあります。
一つ目は「売上アップ」の面におけるメリット。都市部の若年層を中心に新聞購読世帯が減り続け、それに伴い「折り込みチラシ」の効果が下降線を辿っています。それに代わる販促手段として、チラシをポストに投函する「ポスティング」販促が、今のところ効果を発揮しています。しかし、これもまもなく衰退を見せ始めるでしょう。競争が激しくなり「ポストの中に、何枚ものチラシを入れられている!」と、お客様の側の嫌悪感が増してくる時代が、早晩やってきます。これから、法的に規制や罰則が設定されるような動きがあるかもしれません。お客様は、飲食店や病院、自分の趣味の店を探すのと同様、クリーニング店をスマホやパソコンで探すことが主流となってきます。もちろん現段階では、「チラシ」や「ポスティング」なしで、HPだけで新規顧客を獲得することは困難です。しかし集客の「受け皿」として準備しておけば、非常に効果を発揮してくれます。将来、間違いなく「集客の王道はHP」となります。成功のポイントは「個店ページ」の集合体として、会社のHPを作ることにあります。当社がプロデュースしているサイトでは、広告費を使わずに、わずか半年で「地域名+クリーニング」で、検索ページの1ページ目に表示されるようになりました。この春、確実に成果を出してくれることでしょう。
二つ目は「人材募集」の面でのメリット。
「募集広告を出しても、まったく人が集まらない…」と、嘆いているお店は、①HPがない ②HPが更新されていない ③時代遅れのHPのまま、この3つのいずれかに当てはまることが多いのです。
求職者は面接に応募する前に、その会社のことを事前にHPで調べています(前向きな勤労意欲があり、能力の高いスタッフほどそのような行動をとります)。
「広告を見て興味を持つ」という段階と、「面接の予約をする」段階の間に、「HPを見て、会社の内容を確認する」という段階が存在しているのです。①〜③に当てはまる会社は、この「目に見えていない壁」に阻まれているため、広告を出しても電話が鳴らないのです。
成功のポイントは、「とにかく丁寧に」、「わかりやすく」、「写真入りで」、「仕事内容を伝えるページ」を作ること。少なくとも、東京五輪までのあと4年間は「スタッフ不足」「人件費上昇」のトレンドは続くと思われます。早めのHP改善で、少しでも求人効果を高めることをおすすめします。
12 AI・自動化の波
一昨年に、野村総合研究所が出した「2030年までに人工知能やロボット等による代替可能性が高い100種の職業」というリストがあるのを、ご存知でしょうか?
このリストの中に「クリーニング店員」という職種が入っています。他には、スーパー店員、事務員、運転手、オペレーター…等々の職種が「なくなる仕事」としてリストアップされています。一方「なくらない仕事」のリストを眺めるとカウンセラー、デザイナー、クリエイターという言葉が並びます。「クリエイティビティ(創造性)」と「ソーシャル・インテリジェンス(社会的知性)」を発揮できる仕事は残る可能性が高い、とレポートにあります。
「クリーニング料金の計算ができて、リスク説明できて、納期を伝えるだけ」という単純作業の延長(現在、受付しているスタッフは「単純作業」とは思っていないでしょうが、AIが十分に対応できる仕事内容なのです)の仕事をしているクリーニング受付は、今後、必要なくなるのです。
お客様の「心」を満たす、「心」まできれいに〝洗える〟とか、店舗の内装や飾りつけをトータルにクリエイトできる、会社の営業戦略とマッチして売上アップに貢献できる、そのような「クリーニング店員」であれば、一生の仕事として存在し続けるでしょう。
2017年の売上ピークは4月末
13 店舗リニューアルは、必須条件
現在、当社のご支援先で、数字を管理している直営店の数を合計すると600店舗以上に上ります。1点単価は200円台〜500円台まで。商圏状況や生産体制、店舗イメージ、サービス体制、様々なスタイルのお店をご支援させていただいています。
昨年と一昨年の売上数字を検証すると「10年以上、大きなリニューアルをしていない店舗」の数字が軒並み下がり、「3年以内にリニューアルした店舗」が上がっています。当たり前と言えば当たり前の現象ですが、これまでにないほどの差が出てきています。
もはや小手先の販売促進(=福袋がどうだ、回数券がどうだ…)では、カバーしきれないほどの「大きな波=お客様の好みの変化」がやってきています。経営者としては、目先の販売促進も大切にしながら、来るべき時代に備えることを怠ってはなりません。
どのような「好みの変化」が押し寄せているか?例えば、「自分の住んでいる部屋・家以下の雰囲気・空間の店には、足を運ばない」という消費者意識の変化です。
14 自社の「世界観」をあらわす店舗
これからの時代「テーマパーク」のようなお店を作れば成功します。「テーマパーク」は、完全に日常と切り離された空間を演出しています。
・看板もサインも、すべて英語で書かれている。
・そのテーマにあわせた建物、雰囲気、コスチュームで、統一されている。
・土産物に「カルビー・ポテトチップス」は売られておらず、一般社会では目にしないオリジナル品しか売られていない。等々の特徴があります。当社が定義する「テーマパーク型・クリーニング店」の定義は下記の通りです。
①ひとつのコンセプトによって、統一されたお店
②店内で「非日常の憧れの空間」を演出している
③店内の雰囲気を「看板」の一部として、お客様を引き込んでいる
④季節ごと、年ごとに定期イベントが進化する
⑤スタッフは、お店をステージとした「キャラクター」として振る舞う
17 価格政策は慎重に
消費に対するお客様の目がシビアになってきている今、単価を上げることには慎重にならざるを得ません。消費増税前後からの数年間で実施している「単価アップ政策」も、明暗が分かれてきている時期です。
「客数を増やすことが厳しいから、単価を上げて売上減をカバーする」というお店は、破たんへの入り口に立っています。一方「客数をプラスにする準備ができたから、次は単価を上げる」というお店は、飛躍へのスタート台に立っています。自社の状況をできるだけ客観的に判断して、慎重に価格政策を決定して欲しいと思います。
18 春(初夏)が長くなる可能性
毎年、好評を得ている当社の独自の気候予測では、2017年は4月末に売上のピークを迎え、5月〜7月「初夏」の気候状態が長く続くと予測しています。クリーニング業界にとっては、比較的良い年回りになりそうです。セールのタイミングや、シーズンごとの重点販売商品の設定など、これを参考に戦術を決めるようにしています。
19 ダウンの減少傾向に備える
昨年春の売上不振の主要因であった「ダウン製品」の売上マイナスは、今年も続くものと思われます。市場は下がっていても、その中で最大限の「シェア」を上げるための仕掛けを行うことが必要です。ダウン製品の減少に備えて「シェア」を奪取すること。ダウン以外の「売上の柱」を作ること。このような意図を持った販売促進で、春の売上を伸ばしてゆきましょう。
この記事は、有料会員限定です
- 有料会員登録すると、全ての限定記事が閲覧できます。
- この記事のみ購入してお読みいただくことも可能です。
- 記事価格: 300円(税込)