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職人よ、商魂を抱け
クレームに繋がらない受付のポイント
今回は基本に立ち返り、着物をお預かりする際に、どのような受付をすればクレームやトラブルになりにくいかなどをお話させて頂きたいと思います。随分前ですが、テレビか何かでクリーニングはクレームが多い業界だという話がなされていました。
中には言いがかりのようなこともあるようですが、基本的にクレームというのはお預かり時にお客様との意思疎通がうまくいってないことが大きな原因ではないかと思います。
私は正確にはクリーニング業ではありませんので、お客様からクリーニング店さんへの不満などをお聞きすることも度々あるのですが、その多くは、クリーニング店さんが受付した際にお客様が誤解している部分が大きいように感じます。
当店は着物のクリーニングも承っておりまして、専用のサイトも作成しており、サイトを見てお申し込みやご相談をいただくお客様がほとんどです。その時、お客様が最初に言われる言葉の多くに「着物のクリーニングをお願い致します」もしくは、「着物を洗って欲しい」というものがあります。皆さんはクリーニング店さんですから、「クリーニングをして欲しい」や「洗って欲しい」と言われたら、クリーニングをしてお客様に返すと思います。もちろん、それは決して間違いではありません。
ただ、以前にもこのコラムで書いたかと思うのですが、お客様は単に着物を洗って欲しいのではなく、着物を綺麗にして欲しい、そしてそのためにクリーニングをして欲しいと仰っているのです。
ですので、お客様が着物をクリーニングして欲しいと仰っても、その言葉のままに単なるクリーニングだけで承ってしまうと、こちらは料金の通りに作業をしても、お客様の期待値とのギャップにより、クレームや不満へと繋がってしまうということが起きてしまうのです。
それに商いの面で見れば、提案してより多くの料金を頂く機会をみすみす逃しているとも言えます。お客様からご相談・ご依頼があった場合は、まずはお客様の希望することは何であるかということを、うまく引き出さなくてはなりません。このことは、後々のクレームなどを防ぐためにも絶対に必要な作業です。
クリーニング店さんは数をこなしてこそのビジネススタイルでもありますから、そのようなことにあまり時間をかけられないということはあるかと思います。ですが、着物のような特殊品の場合、ある意味受付や見積もりが仕事の重要な部分の大半を占めると言っても過言ではありませんから、その場で無理でも、お預かりした後にご連絡をするなどの方法で、お客様の希望とのギャップを埋めることを心がけてください。
では、当店が実際にご相談などをいただいた際に、お客様にどのようにお話を聞いているか、簡単にシミュレーションしてみます。
お客様が「着物をクリーニングして欲しい」と仰ったとします。そうすると私は必ず「失礼ですが、お着物はシミなどはございますか?」とお尋ねします。そこでお客様がシミはないと仰ったら「では、クリーニングで承らせていただきますが、こちらで詳しく拝見させていただきますので、シミなどがあった場合はご連絡させていただきます」と返答します。
このやり取りのポイントは、お客様がシミが無いと思っている物でも、実際に見るとシミがある場合も多く、クリーニングのみでお返しすると、そのシミが最初からあったか無かったかでお客様との意見の相違に発展することがありますので、それを防ぐ予防線になります。シミを確認後にお見積りをご提案して、それでもお客様がクリーニングだけで良いと仰れば、お渡し後のクレームに繋がる可能性はぐっと低くなります。
話を戻して、お客様がシミがあると仰った場合は、どのようなシミであるか?どのあたりにあるか?などを、お客様にヒアリングします。出来れば、その内容は預かり伝票などにメモしておいて、お客様と店舗で共有しておくのが良いでしょう。実際にお着物をお預かりした際にお客様が認識しているシミを見落とすことがありませんし、例え他の場所に少し見落としたシミがあったとしても、クレームに繋がりにくくなります。
色々書きましたが、やはり一番のポイントは、お客様の話を引き出してよく聞き納得していただくことだと思います。
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