最終更新日:

ドンブリ勘定は危険です!

安易な割引を続ける中小個人店に未来はない

有限会社エルコーポレーション 代表取締役

瀧藤圭一 (たきふじけいいち)

私事で恐縮ですが、この度、自身、14冊目となる本を出させて頂きました。「未来が分かる・未来が見える・未来を変える戦略会計入門」と題した管理会計の入門書です。

20161220-2

書籍の購入はこちら

ここに書かれた内容は、2013年4月から大阪で始まった、「目指せ!年収1,000万円プロジェクト」と題した、利益アップを実現するセミナーの内容をまとめたものです。大阪で行った12回連続のセミナーを基本に、以降6回から5回のセミナーを、全国で延べ13会場で行ってきました。1DAYセミナーも含めると、全16会場での開催。そして今も、その上級クラスをはじめとしたセミナーは継続しています。次世代を担う、若きクリーニング店経営者を中心に、まずは年収を1,000万円までに増やすという身近なところから、それに必要な利益はいくらなのか。どうすれば利益が増えるのか。それには何が足りないのか。必要な知識は何なのか。売上も大事、しかし利益はもっと大事、そして、手にする現金が最も大事の考えを基に、実際のモデル店の数値を用いてできるだけ分かり易くお話ししています。

このセミナーも、いよいよ来年5年目に入ります。ほんの一昔前までは、経営の話、それも会計の話など見向きもされませんでした。それが今や、多くの人が、若き世代の方々が、セミナーに参加しています。これもひとえに、業界を取り巻く環境が厳しさを増しているからに他なりません。建築基準法の厳格化をはじめ、社会保険適用の拡大。そして止めは、最低時間給の引き上げです。国の方針は、全国平均で時給1,000円を目指しているのは間違いありません。それでなくても、クリーニング業の平均賃金は、巷で騒がれている介護関連の賃金よりもまだ低く、人材の確保は今後より難しくなると予想されます。それらに対応するには、より多くの利益が必要であり、手元資金を増やさなければなりません。

ところが、利益を増やすには昔ながらの売上を増やすことが一番と思い込み、安易な割引きセールを多用するところが後を絶ちません。確かに割引きセールは消費者に分かりやすいので、それだけ反応も大きく、見かけの売上は多くなります。しかし、それでは肝心の利益を大幅に減らしていることに気付く人が少ないのはなぜでしょうか。ひとえに、利益計算ができないからでしょうか。いや、費用が変わらないのに料金を下げると利益が少なくなるのは、誰の目にも明らかなはず。にも拘らず割引きセールを止められない。

その理由は、割引きセールを止めると売上が減ってしまわないか、お客様を他店に取られやしないかと心配するからです。一日数百点の集荷量の小規模店や個人店が行う販売促進策や、数千点の集荷量の中規模店が行う販売促進策。あるいは、数万点の集荷量を誇る大規模店が行う販売促進策は、その集荷する点数や規模によって違ってしかるべきです。にも拘らず、同じような販売促進策を取っているのであれば、特に中小個人店の得られる利益、手に残るお金は大規模店と比べて少なくて当然です。

そこで「管理会計」です。一般的な財務会計とは異なり、経営者や経営管理者が意思決定をする時、必要な情報(主に数値化した情報)を提供するために作られた会計です。この会計手法を使えば、例えば、割引きセールをおこなうと、売上は増えるが、利益はどれだけ減るのか。あるいは、割引きセールを止めて売上が減っても、利益は逆に増えるので心配するには及ばないとか、そういったことが分かるようになります。もちろん、経営を続けていく上で出会うシビアな経営判断も、この管理会計の手法を用いれば、判断を下しやすくなります。

例えば、クリーニング店で一番集荷量の多いワイシャツ。外注がいいのか、内製がいいのか、その判断の基準になる受注点数は何点か、といったことや、プレス機のシングルタイプと、ダブルタイプの入れ替えの判断になる受注点数は何点か、といったことが、この会計手法を用いれば分かるようになるのです。借り入れに際しての返済期間を、何年にするのがいいのか、といったことも分かりますし、借入金返済に必要な売上高を計算することもできます。

今後、より厳しくなる経営環境に対応していくには、売上を増やすことだけに注力していれば経営を続けられた時代は終わりを告げたこと。企業の使命である「存続」には、今までになく多くの利益が必要になり、それには利益計算をはじめ、必要な数字を把握できなくてはいけないことを知ってほしいのです。

安易な割引きセールを続ける限り、中規模店や小規模個人店の未来はありません。そしてこれからは、大規模店といえども、割引きセールは難しくなっていくでしょう。とはいえ、割引きセールという販売促進策の全てを、否定するわけではありません。目的がはっきりしている、そして、利益計算がしっかりできている意義のある割引きセールは問題ありません。大切なことは、売上を増やすことだけを目的に、利益を無視してまでおこなう割引きセールは、そろそろ止めるべき時が来ているということです。適正な利潤を確保できなければ、今後、存続し続けることは難しいと思わなければなりません。

数字は決して嘘をつきません。その数字に真正面から向き合い、その数字をしっかりと把握することで、未来が分かり、未来が見えて、そして、未来を変えることができるのです。「経営は会計にあり」なのです。

この記事は、有料会員限定です

  • 有料会員登録すると、全ての限定記事が閲覧できます。
  • この記事のみ購入してお読みいただくことも可能です。
  • 記事価格: 300円(税込)

この記事の著者

瀧藤圭一 (たきふじけいいち)

有限会社エルコーポレーション 代表取締役

有限会社エルコーポレーション代表取締役。

1957年 大阪市生まれ。

クリーニングの営業に興味を覚え、外交専門のクリーニング店へ入る。1985年に独立。1990年にユニット店「クリーニング エル」を開店。


現在は、長年の実経験に基づくコンサルタント&サポートに軸足を移すも、現場感覚が大切と、今も外交営業を続け市内を走り回る。

全国で経営、外交営業に関する講演活動及びコンサルタントを展開中。

業内においては、外交営業について講演できる唯一の逸材。


また、「経営は会計にあり」の基、店舗戦略をはじめとした経営実務とクリーニング業に即した会計の講座を年間スケジュールで開催。


売上も大事、利益も大事、しかしキャッシュはもっと大事の考え方を中心に、年収アップを目指す講座は人気を博し、大阪はもちろん、茨城、東京、八王子、神戸、広島、松山、浜松、福岡でも6回連続の講座をおこない、これまで1回完結の講座も含め、全国で延べ18講座を開催。


今尚、実務に即した講座、「戦略会計実践塾」を継続中。実践に基づいた経験と数理的な分析を加味し、わかりやすく成功理論を説く。


<著書紹介>

◆ クリーニング現場からのクレーム対応(完全版)

◆戦略会計入門

◆新版・目からウロコの外交営業マニュアル(実践編)

◆新版・目からウロコの外交営業マニュアル(基本編)

◆ポイントがわかるとスラスラ読める超かんたんクリーニング業の決算書読み方入門

◆ユニットショップ 経営でもっとも大切な事

◆ルート外交マニュアル最終完結版


㈲エルコーポレーションHP
E-mail

関連記事