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「ひとつ上の会計」を目指す 瀧藤圭一の戦略会計 〜明日の経営を切り開く〜
季節変動の大きいクリーニング業では 【季節変動指数】が計算に欠かせません!
調整データの活用
次に「調整データ」です。季節変動の大きいクリーニング業では、閑散期である1月の売上データと、繁忙期の5月の売上データを比較することができません。比較できるのは、昨年の同月の売上データ(昨年度対比)とか、以前の同月の売上データでしかありません。つまり、同じ月同士のデータでしか比較することができないのです。表1の2022年度を2021年度と比較すると、1月の売上高は昨年度対比102.0%。
5月の昨年度対比では115.8%。年間売上高では106.8%です。2021年度の売り上げと比べて、2022年度の売り上げが増えていることが分かります。特に5月の売り上げが、かなり大きく増えています。この結果から、1月よりも5月の方が良かったといえるのでしょうか。そこで調整データです。この調整データを用いれば、同年度の閑散期や繁忙期の月同士の売上データであっても、比較することが可能になります。
用いるのは季節変動指数です。表3を見て下さい。これは表1にある2022年度における1月から12月までの売り上げの調整データです。計算式は各月の売上高を季節変動指数で除算すれば求めることができます。例えば、閑散期である1月の調整データは6,143,000円÷0.6657で、約9,228,000円。
繁忙期である5月の調整データは13,309,000円÷1.5279で約871万円。実際の売り上げでは大きいはずの5月の売上高よりも、1月の売上高の方が大きくなりました。この調整データから見てとれることは、2022年度では、1月から3月までの閑散期の期間、かなり健闘していたことが分かります。おそらくこの期間に、閑散期対策として何らかの販売促進策がおこなわれていたのではないかと推測されます。
その逆に、繁忙期の4月、5月、6月の売り上げがあまり芳しくありません。繁忙期だからと、何の対策も講じなかったのではないでしょうか。つまり、調整データとは、季節要因といった変動を除去した後の、真の姿を見せてくれるデータであるということです。
売上高予測の方法とは
さて、ここまでは期中における年度末の売上高予測の方法を、詳しくお伝えしました。次に、翌年度の売上高予測の方法をお伝えしていきます。
ほとんどの場合、今期の売上高を基準に、何パーセントアップといった金額、それも希望的観測や、気持ちだけのスローガンを掲げた金額を予測されると思います。これが一番簡単な方法でもあります。しかし、基準となる今期の売り上げを、最低限来期も売り上げることができると、誰が保証してくれるのでしょうか。
その売り上げが確保される保証はありません。今回のコロナ禍しかり。地震、台風、洪水等々、毎年起こる自然災害だけでも枚挙にいとまがありません。その度、売り上げは激減します。そんなことを言っていれば、売上高予測は到底できないと思われるでしょう。だとしても、少なくとも現在の状況や外部環境を見据えた論理的な根拠のある売上高を予測しなければなりません。
一番おこなってはいけないことは、無理な売上高、つまり、希望的観測を前面に出した売上高や、到底達成できそうもない無茶な金額を前提にした事業計画は、当然のごとく狂いが生じ、営業利益は赤字に陥り事業は頓挫します。事業計画の前提になるのは、翌年度の売上高であり、各費用の予算化です。この売上高を正しく予測することこそ、事業を円滑に且つ、計画通りに進めていくことができるのです。
では、不確実の中での売上高予測はどうすればいいのでしょうか。売上高の予測には二通りの方法があります。ひとつは、それぞれの金額を積み上げていく方法。もうひとつは、これまでの売上高の実績を基に、数式を用いて計算する方法です。
但し、この二通りの方法で注意することは、それぞれの金額を積み上げて予測する方法では、どうして達成できなかったのか、その逆に、なぜ達成できたのか、その要因を後から検証できる根拠のある金額にすること。また、数式を用いて予測する方法では、数式を用いる以上、その売上高を達成できる確率も同時に計算しておかなければなりません。不確実の中でも、より確実性を高めることが肝要です。(以下次回)
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