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付一笑

繁忙期にセールをするとどうなる?

有限会社エルコーポレーション 

瀧藤友子 (たきふじともこ)

そのセールは「誰のため」になるか考えよう

春真っ盛りです!衣替えのピークです!皆さん「儲かってまっか?」

クリーニング業は、春の衣替えで儲けて、冬の閑散期にその儲けを吐き出すというお金のサイクル。だから、春にしっかり儲けるか、閑散期に赤字にならない仕組みを作るかしかないわけですよね。

でも、閑散期に赤字にならない方法って何? 1月上旬から桜の開花までの、3か月足らずが閑散期。そんな長い期間どんな手を使って赤字解消できますか?売り上げアップのため、1月にワイシャツの回数券を沢山売ったところで、2月にはワイシャツの売り上げがなく、経費だけが嵩んでいく。

あの手この手のセールを打っても、セール後は閑古鳥。単価の高いコートや毛布、布団類は着用真っ最中のためクリーニングに出してくれるわけはない。じゃあ赤字解消の歳入が見込めないなら、歳出を抑えるしかない!とはいえ、家賃も光熱費も材料費も人件費も閑散期割引はない。

苦肉の策として、時短操業しかないけれど、それも工場だけの節約でしかない。ということは、やっぱり春の繁忙期の儲けをしっかり蓄えておくべきだよね。なのに「衣替えセール」という割引きをし、手に残るお金を減らしている。そりゃあ、閑散期に苦しくて当たり前だと思わない?

今年40周年を迎えた東京ディズニーリゾート。累計8億人が訪れているそうな。開業以来、エリアの拡大、アトラクションの新設、季節ごとのイベント等を繰り出し、毎年入園者数を増加させてきた。開業日には約2万人が入園、10年ほど前からは年間3千万人超が利用と入園者数を順調に伸ばしてきた。

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ところが、新型コロナウイルス禍によって、4か月に及ぶ休園、その後は入園者数を制限しての営業となり、上場以来はじめての赤字に転落。だけど、さすが長年入園者を魅了し、集客力を高めてきた東京ディズニーリゾート。

長い休園や入園者制限で得た気づきを、今後の少子高齢化やリゾートの多様化対策に反映できるよう、経営方針を転換していくとのこと。入園者数制限により、すべての待ち時間が減り、ゆっくりと楽しめるようになった。

アトラクションへのトライも増え、土産物選びに時間を費やせ、食事もゆったり利用できるようになった。チケットも値上げした。その為、ひとり当たりの売り上げが5年前に比べ25%も増えた。だから今後も入園者数の上限を設ける、としている。

つまり、お客様満足度を上げれば、一客単価が上がるので、入園者数の上限をピーク時の2割減である2千6百万人に制限としたところで、経営上なんの損失も被らないということ。

それに比べて、クリーニング業はどうなんやろねえ。いまだに、お客様満足は割引きにあると思っているけど、本当にそうなんやろか?

繁忙期にセールをするとどうなる?ここぞとばかり、クリーニング品を抱え込んだお客様が次々にやってくる。店舗スタッフから笑顔は消え必死の形相。「笑顔で接客」なんて風前の灯火。高額商品ですら、ドライ袋にギューギューに詰め込んで、おまけに、それらを積み上げてご満悦。

「ああ~ヤダ!嫌だ!!」。洗浄前検品もどうなる?ボタンやベルト、付属品が有ったのか無かったのかなんて覚えちゃいない。穴あきや変色なんて見てもいない。山積みとなったしみ抜き商品の中や納期調整したドライ袋の中に、通常仕上げのクリーニング品が混じり「無い無い騒動」が勃発。

ドライ機にも水洗機にも、目一杯詰め込んで洗うので汚れ落ちは悪い。プレスに至っては、「どうせ、来シーズンまでタンスにしまい込むのだから適当でいい」と手抜き。それどころかポケットフラップが中途半端に入っていようが、袖口の折り返しの位置が左右違っていようがお構いなし。パンツの二重線も気にしない。

結局、自社のキャパを把握してもいないのに、セールをしてクリーニング品を集めているから、クオリティが数の前に負けるんやねえ。そこを指摘すると、「安くしているから仕方ない」なんだって!消費者をなめんじゃないよ!そんなことやっていて、お客様満足度が上がり、会社も潤っているのかねえ。

新型コロナウイルス禍で外出を控えた。外出を控えたためクリーニングに出す点数が減った。それで、クリーニング業の売り上げが下がった。ということは、お客様の洋服の着用頻度で売り上げが決まるんじゃないの?だから、セールをしたところで儲けが減るだけということに、いい加減気づきませんか。

『災い転じて福となす』 では、このへんで、ごめんやす。



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この記事の著者

瀧藤友子 (たきふじともこ)

有限会社エルコーポレーション 

1956年、大阪市生まれ。大阪大谷大学 文学部英米文学科卒。英語の教員免許取得。卒業後、元内閣総理大臣、中曽根康弘大阪事務所に勤務。その時、徹底的に接遇の指導を受ける。


1989年、ゼンドラのコラムでおなじみの瀧藤圭一氏と(有)エルコーポレーションを設立。翌年、ユニットショップ「クリーニング エル」を開店。フロントの接客業務はもちろん、洗い、しみ抜き、仕上げプレス、更には経理に至るまでの業務全般をこなし、スタッフの指導、育成を手掛け、店舗運営、処理作業の一切を取り仕切る。


フロント業務と処理業務療法に精通しているだけに、何かと行き違いの多い量業務コーディネーターとして活動を期待されている。


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