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ローコスト高生産工場の作り方

逆風をチャンスに変えるために

北川幸一 (きたがわこういち)

●深刻な人手不足

政府観光局の統計によれば、この8月の海外からの観光客は、コロナ前の水準の8割を超えたそうです。まだ中国からの団体客は来日していない段階でこの水準ですから、インバウンド需要は順調な回復を見せているといえましょう。一方でウクライナ戦争の影響もあり、定期航空機の運行状況は、以前の6割ぐらいの水準にとどまり、近場のアジアの観光客はチャーター便で来日しているようです。

訪日外国人旅行者の増加に伴い、ホテルの稼働率も以前の水準を取り戻し、大変忙しくなりました。もっともホテル側での、清掃やリネン交換を行う人員が足りないため、稼働率を下げざるを得ない状況も続いているようです。

ホテル客室清掃に限らず、需要の急激な回復に追いつかず、人手不足はレストランや街の食堂でも見られる現象です。新型コロナウイルス禍での人員削減で、増員が間に合わない状況です。それに伴い人件費の急激な高騰も経営に大きな影響を及ぼしています。

リネンサプライ工場でも、人手不足は表面化しています。条件の緩和に加え、人件費の急騰は避けられません。

またガソリン代の高騰と運転手不足は、配送費の急激な上昇を招いています。このような状況下で、リネンサプライ業では顧客への値上げ交渉も景気回復と同時進行で行われています。以前のセット料金は、世界水準の半値以下でした。人件費の犠牲の上に成り立っていた低価格も、人手不足の状況は全業種共通のテーマですから、インバウンド客の増加の影響が、ようやく適正な価格水準に戻したともいえましょう。

値上げ交渉はまた、採算のあわない顧客の入れ替えを行うチャンスでもあります。プロ野球は少ない球団でリーグ戦を行うため、万年最下位という言葉がありますが、サッカーのJリーグでは2年間最下位だと、J1のチームでもJ3まで落ちてしまいます。リネンサプライ業では「円安」「物価高」「人員確保の困難」という逆風が、価格交渉の追い風になる千載一遇のチャンスでもあるのです。

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●工場の省人化

同時に進めていかなければならないのは、生産コストの見直しです。人件費に即つながる人手の多さと、燃料費の削減は、工場運営の永遠のテーマであり、やらなければならない最優先項目です。

リネンサプライ工場で作業しているのは、洗濯物を運んでいるか、機械の操作を行っている人たちです。

連洗機は洗い場から大幅な人員削減を果たしました。現在では連洗機の出し入れに人は介在しません。洗濯脱水機もバッグ投入、乾燥機への投入・排出もコンベアにより自動で行えますが、50~100キロの洗濯脱水機が主流の日本の工場では自動の出し入れシステムは、あまり普及していません。

その後、人員を必要とするのは、タオルのたたみとロール機(フィーダー機)への投入です。ロール仕上げ後はコンベアで各機械から集合でき、最終工程でのローラーコンベアの仕分け機があれば、最小限の人員で作業できます。現在、タオル投入の自動機械の開発・実用化が進んでいますが、タオルラインから人がいなくなるのも時間の問題でしょう。

ただ、気をつけなければいけないのは、最小限度の人員で捌けるのに、その作業の効率化をはかることをしないで、安易に自動化機器に頼ることです。たった1人か2人の合理化のために、多額の出費を払うことです。自動化のための機器は、日常のメンテナンスが欠かせません。その人員の確保はより難しくなるからです。

工場内の品物の動きは、単純化する必要があります。現在の省力化された工場では、全自動の無人ロボットを入れなくても、1トンあたりの生産をするのに、作業者1人に限りなく近づいているからです。

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この記事の著者

北川幸一 (きたがわこういち)

株式会社ケーエスシー

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