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瀧藤圭一の戦略会計【実践編】
特に重要な指標は「手元流動性比率」であり、貸借対照表の流動資産にある「現金預金残高」の金額
(前回の続き)となると、経営改善の指標として用いるなら、売上高に対する利益率を高めること、あるいは少ない総資産で大きな売上高を達成することがベストになります。くれぐれも借入金である負債を増やして、ROEを高くすることは考えないようにして下さい。
また、先ほどのROEを高める方法として、自社株の買い入れという手段もありました。その場合、余剰資金でおこなうのもいいのですが、借入金で自社株を買い集め、無理やりROEを高めようとする企業も散見されます。問題はその結果、債務超過に陥ってしまうことです。この債務超過とは、企業の負債の総額が資産の総額を超える状態のこと。つまり、資産をすべて現金化し負債の返済に充てても、返済しきれない状態のことを指します。
とはいえ、債務超過に陥ると直ぐに倒産するというわけではありません。新たな資金調達ができたり、返済の猶予である「リスケ(リ・スケジュール)」を受けられたりして、資産より負債の方が大きい状態(資産<負債)から資産より負債の方が小さい状態(資産>負債)へと、バランスが改善されれば倒産することはありません。
ただ、債務超過に陥っている時点で、経営状態はかなり厳しい状態であることに変わりはなく、場合によっては金融機関との取り引きができなくなることもあり、早急に改善しなければなりません。
この債務超過と合わせて注意が必要なことに「資金ショート」があります。これは返済や支払いに対して、手元に持っている現金・預金等の運転資金が足りない状態を指します。債務超過は直ぐには倒産に直結するものではなく、改善策を講じることもできます。しかし、この資金ショートは「今、必要な資金が不足している状態」ですから、下手をすると倒産に直結してしまう危険を孕みますので、特に注意が必要です。
そうならないためには、赤字経営の解消に努めること。返済や支払いに対する認識の甘さを解消すること。そして見落としがちなことに税金、特に消費税の納税に対する認識を改めることが重要です。この消費税の納税に関しては、売り上げではなく預かり金であるという性質が高いだけに、徴税にはかなり厳しく当たるようですから、注意が必要です。
●ROEの計算に使用する指標
【重要な指標とは】
これまで収益の分析や安全性の分析、また経営改善のための分析をおこなうことで、そこから導かれる重要な指標を紹介しました。もう一度確認をすると、収益性を分析するのは、売上高総利益率、売上高営業利益率、売上高経常利益率、売上高当期純利益率、総資本回転率でした。安全性を分析するのは、当座比率、流動比率、固定長期適合率、自己資本比率。一方の経営改善の分析としては、ROA(総資産利益率)、ROE(自己資本利益率)でした。そして、忘れてはいけない重要な指標に「手元流動性比率」がありました。
とはいえ、これらすべての分析を毎月おこない、指標を算出しなければいけないのでしょうか。確かに、経営の危機に陥っている場合は重要な指標なだけに、その数値を基に改善をおこない安全性を高めなければなりません。また、株式投資をおこなう場合にも、対象となる企業を詳しく分析することは必要です。しかし、そうでなければこの中から特に重要な指標だけを算出確認し、改善の目安にすればいいでしょう。それ以外の指標は3ヶ月に一度、もしくは6ヶ月に一度ぐらいでも問題はないでしょう。
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