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「ひとつ上の会計」を目指す 瀧藤圭一の戦略会計 〜明日の経営を切り開く〜
季節変動の大きいクリーニング業では 【季節変動指数】が計算に欠かせません!
先月は、「季節変動指数」と「分配率」を用いて、期中における期末の売上高予測の方法をお伝えしました。少し難しかったとのご意見を頂いたので、もう少し詳しく具体的にお伝えします。大切な計算式なので、是非とも覚えて活用して下さい。
税引前当期純利益を知るためには
マネジメントをおこなう者にとって、誰しも今期の売上高がいくらになるのか、本業の儲けである営業利益はいくらなのか、そして税引前当期純利益はどうなるのかを知りたいもの。それらを知るには、期末の売上高が予測できなければ計算することができません。
この売上高を予測できることで、変動費や固定費のそれぞれの費用が、当初立てた事業計画通り、つまり予算通りに進んでいるか、その進捗状況を知ることもできます。
計画通りの売り上げに達していなければ、追加の販売促進策をおこなう必要が出てきます。もちろん、売り上げを増やすことだけでなく、変動費や固定費の見直しも進めなければならないでしょう。予算をオーバーしているようなら、削減案を考えなければなりません。年度末になってからでは遅すぎて、どうすることもできません。月ごとの試算表のデータを基に計算し、確認する必要があります。
季節変動指数が必要
そこに必要な数値が季節変動指数です。これは、複数年の売上高の平均に対する年度ごとの売り上げの割合を示したものです。この年度ごとの売り上げには、複数年における同じ月の売上高の平均値を用います。表1を見て下さい。2018年から2022年まで5年間の1月から12月までの売上高が記入されています。
2018年から2022年の月々の平均売上高は表1の平均①の列です。そして、2018年から2022年の60ヶ月の平均売上高は、904万5000円(表1の②)になります。各月の平均売上高をこの60ヶ月の平均売上高で除算すると、各月の季節変動指数を求めることができます。
例えば1月は6,021,000円÷9,045,000円で、約0.6657となります。次に分配率です。この季節変動指数の数値を、1年間の月数である12で除算すれば求めることができます。先ほどの例でいえば1月の分配率は、0.6657÷12×100で約5.6%となります。
各月の分配率を合計すると「1」になるので、その月までの累計売上高を累計分配率で除算すれば、その期の着地点である期末売上高を予測することができます。
例えば、9月の段階で12月末の売上高の予測は、8,2309,000円÷76.3%で17,563,000円となります。(表2)実際の売上高は107,400,000万円でしたので、その誤差は僅か十数万円でしかありません。当然、年度当初の予測値と、年度末が近づいてからでは、予測値はかなり違ってきます。それでも各月の試算表が出た時点で、今期の売上高の予測をおこなうことは欠かせないものなのです。
その年度の着地点である年度末の売上高が分かれば、その時点の変動費率を当てはめることで、限界利益が計算できます。変動費率を30%とすると、限界利益は、107,563,000円×(1−30%)で75,294,100円。事業計画である5ヶ年計画ができていれば、変動費の内訳(勘定科目)の割合も分かっているので、予算通りの費用になっているのかも確認することができます。
また、その時点での固定費も分かっているので、年間の固定費に計算し直すことで、年度末の営業利益を計算することができます。これを、できれば毎月、最低でも4半期ごとにおこない、事業計画通りに進んでいるのか、その進捗状況を確認することが重要です。
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